倫理観

ただのアイドルオタクの独り言です。

舞台「モダンボーイズ」──エンターテイメントの力──

※この記事には舞台「モダンボーイズ」のネタバレが含まれています
※記憶違いがあるかもしれませんがご了承ください
※感情のままに書いているので乱文ですがご容赦ください



2021年4月10日、加藤シゲアキさん主演の舞台「モダンボーイズ」を観劇しました。



モダンボーイズ」は、1994年に木村拓哉さん主演で都政施行50周年記念公演として上演された、幻の名作ともいわれる青春群像劇です。

 

【あらすじ】(公式サイトより)
日中戦争前夜、浅草のレビュー小屋。座付き作家の菊谷栄に、同郷(青森)の友人・工藤がプロレタリア革命を志す同じく青森出身の学生・矢萩奏を紹介する。
ある日、矢萩が警察に追われて劇場に逃げ込んでくる。菊谷と劇場の仲間たちは、矢萩に道化の扮装をさせて、警察から匿う。尋問を受け、菊谷はコーラスボーイだとごまかすが疑う特高刑事。仕方なく歌を披露する矢萩。故郷で合唱部だった矢萩の「My Blue Heaven」の歌声はすばらしかった。
矢萩は劇場に身を隠すことになる。そこで思想活動のために封印していた音楽の才能が開花し、やがて矢萩は浅草エフリィの芸名でレビューの人気者となっていく。しかし不景気と戦争が切迫する時代。不要不急と言われる浮かれたレビューの世界に生きることに悩み揺れながら、そんな時代に劇場の扉を開き、歌い、踊り続けることの意味を、矢萩は菊谷や仲間たちとともに噛みしめてゆく。



大戦に突入しつつあった激動の時代において、様々な文化・思想の入り乱れるメルチングポットとして混沌かつ唯一無二の輝きを放っていた浅草六区
レビュー小屋や活動写真館等、様々な娯楽施設が立ち並び賑わいを見せていた浅草は、大衆にとってまさに夢のような場所だったに違いありません。

そんな浅草のレビュー小屋で起こる奇跡を、「モダンボーイズ」では描いています。







私は、「モダンボーイズ」はこのコロナ渦に上演するからこそ意義のある舞台だったと強く感じています。


加藤さん演じる奏はプロレタリア革命に傾倒する青年であり、労働者や農民等の一般人がブルジョア階級に搾取される日本の構造に激しい憤りを覚えています。
(資産を持ち音楽を嗜む余裕もある青森のブルジョア階級に生まれたという、まさに太宰たる境遇がコンプレックスを生み、結果革命思想へと依存していった部分もあるかと)

戦争が起こっても、駆り出されるのは一般民衆だ。
私欲を貪るブルジョアを滅ぼさなければ、日本はどんどん疲弊していく。
日本を変えなければならない。革命を起こせ。


そんな思想を持った奏は、当初はレビューを否定的に見ていました。
レビューなど、何の役にも立ちはしない。
今この瞬間にも、国に苦しめられている人々はたくさんいるというのに。



しかし、菊谷たちのレビューを見た奏は、その希望に満ちた輝きに感銘を受けます。
菊谷はレビューを通して、「自由」の美しさ・素晴らしさを観客に伝えようとしているのでした。

国による検閲がどんどん厳しくなり、「戦争に行っても、弾に当たらないようにずっとしゃがんでいてね」と愛しい人に願うことすら罪となった時代。
そんな暗い時代でも、一歩レビュー小屋の扉を開けば、そこでは皆が馬鹿みたいに笑って踊って、キラキラと輝いている。
レビュー小屋では、階層や前科なんか関係ない。
そこでは、「誰もが何者でもない人になれる」、「誰もが自由になれる」。

「本当に不要なものなら、誰がそんなものに金を出そうと思うかね?」



コロナ渦でよく耳にするようになった言葉、
【「不要不急」の外出は控えてください】

レビューのような娯楽は、必ずしも存在しないといけないものではありませんし、なかったら生きていけないものでもありません。
いわば、「不要不急」。

去年から感染防止のために、数え切れない程の娯楽が中止となりました。
コンサート、舞台、スポーツ、映画──


モダンボーイズ」で描かれている思うように表現することが叶わない検閲の時代と、今のコロナ時代は、少し似通っているなと感じます。
そして、そんな暗く辛い時代だからこそ、人々は「不要不急」の輝きを求めるのだと思います。
 


作中で、とあるシーンがありました。

革命を叫ぶにも関わらず、不要不急の娯楽であるレビューに熱を捧げる様子を「矛盾している」と指摘され、思い悩む奏。
蹲る奏のもとに、いつもレビューの便所掃除をしているおばあさんがやってきました。

おばあさんは、いつも舞台袖から奏たちのレビューを見ていました。
12歳の頃に奉公に出され、その時からずっと便所掃除ばかりしている。針仕事のひとつもできやしない。便所ばかり触っている汚い手だと、おばあさんは言います。彼女はまさに、当時の労働者階層を象徴する人物でしょう。
そんなおばあさんにとって、奏たちのレビューは「この世のものではないみたいに綺麗」なものでした。
しかし、おばあさんは一度も客席からレビューを見たことがないと言います。


すると突如、奏は自身を覆っていた布を取り去り、おもむろに歌い出します。
これ以上ない愛の歌を。
腰が曲がり汚れた服を着たおばあさんの前に膝をつき、薔薇を一輪そっと差し出します。
そして、薔薇を受け取ったおばあさんの手を取り、優しいキスをひとつ。

微笑みかけられたおばあさんは、ありがとうございます……!と繰り返し口にしながら、声を上げて泣き出したのでした。

 


ステージに憧れ、一時の光を見出していたおばあさん。
そんな彼女の便所掃除で汚れた手に薔薇を握らせ、キスを送ってくれた浅草エフリィ。


その瞬間、彼女の姿と客席から舞台を観ている自分自身が、何故か重なって見えました。
気がつけば、涙が溢れていました。




エンターテイメントに生かされ、生きる希望を見出している人たちがいる。
モダンボーイズ」のレビュー小屋にも、そうした人々がたくさん足を運んでいることが分かります。

「ここでは、誰もが自由になれる」
「ここでは、誰もが何者でもなくなる」
「ここは、奇跡が起こる場所」

よぼよぼのおじいさんも、レビュー小屋に一度くれば元気いっぱいになって帰っていく。
皆が我を忘れて笑顔になれる。
どれだけ日常で、辛いことがあったとしても。


奏は叫びます。
浅草を歩く人々の中には、犯罪者もいるかもしれない。人を殺めた人もいるかもしれない。
そして、そんな人々も、レビュー小屋のドアを開くかもしれない。

僕はここで、世界を変えてみせる。
奇跡を起こす。



エンターテイメントの前では、誰もが自由になれる。
自分ではない人の人生に感動して一喜一憂し、明日からも生きていく力をもらって帰っていく。

エンターテイメントは、確かに不要不急のものかもしれない。
けれど、その持つ輝きや希望に救われている人が
この世にはたくさんいる。

私もその一人です。
「来月のイベントのために頑張って生きよう」「楽しかった、これで明日からも頑張れる」と、何度エンタメに生きる力をもらったか分かりません。



そんな私にとって、奏が「何があってもこのレビューのドアを開け続ける!」と宣誓する姿は、とても眩しく尊いものに見えました。



それでも、人生というものは残酷で、自分の力ではどうしようもなくなる時はある。
作中においても、検閲に逆らい続けていた菊谷は戦争に招集されてしまいますし、レビューに生きると誓った夢子は人身売買の過去から逃れられず舞台を去ることになります(まあでも最後には戻ってきてハッピーエンド、と思っていたら、本当に永遠の別れになってしまいました。現実とはそういうものなのかもしれません)。

それでも、人生という物語は続いていく。
私たちは時に打ちのめされながらも、生きていかなければならない。


そんな物語の旅路を明るく照らしてくれる光こそがエンターテイメントだと、私は信じています。



NEWSの曲「NEW STORY」には、以下のような歌詞があります。


何度夢に破れ 夢にはぐれ ここまで来ただろう
生きていく 一度きりの物語を
他人(ひと)に言えないこと 言わないこと 胸にあるだろう 
生きていく すべて抱え進んでいく
自分(きみ)のSTORY
それが“STORY”




一度きりの物語を、みんな懸命になって生きている。
それでも、どうしても辛くなったら、エンタメの力に頼ってもいい。
「逃げる場所にしたっていい」「僕らの手を握っていて そのぬくもりを忘れないで」(NEWS「クローバー」)。
人がエンターテイメントを求め続けてきた所以は、ここにあるのではないかと思います。

不要不急かもしれないけれど、それでも人にとってエンタメは希望であり、光です。
そして、そんなエンタメを「どんな時でも笑顔でいよう」と舞台の上から届けてくれる、レビュー小屋の皆のようなエンタメ人たち。
彼らの輝きを求めて、心の糧にして、私はこれからも生きていくのだろうなと思います。





また、「どんな状況でもこのレビューのドアを開き続ける」と強く誓っていた奏たちの姿が、「この船を守り続ける」と誓っていた3人の姿、そして「僕の仕事は、自分の人生を使って物語を魅せること」と言っていた彼の姿と重なって見えた瞬間がありました。

どれだけ苦しいことがあっても、辛いことがあっても、それでも守りたいものがある。
そんな自分たちを見て、救われる人がいる。
物語を紡ぎ続ける。


増田さんの、「ここに来たら楽しいことが待ってるって思えるような場所にしたい」「NEWSを皆の居場所だと思ってもらいたい」「どれだけ普段辛いことがあっても、ここに帰ってきたら元気になれると思ってもらえるようになりたい」という言葉。
何万ものファンの思いを背負って、時に転びながらも前に進み続ける彼らの背中に、私はこれからも着いていこうと思います。
自分勝手だけど、私の思いを彼らに背負ってもらって、心を支えてもらいながら生きていこうと思います。
「自分たちを必要としてくれる人がいる限り、この船を守り続ける」という彼らの言葉に、頼っていこうと思います。

彼らは最高のエンターテイメント人で、最高のアイドルだと、心から思います。





この他にも、「モダンボーイズ」はたくさんのメッセージが込められた作品でした。

売られて妾にされた挙句にレビューから引き戻される夢子や「女は身を売ることでしか生きていけない」という台詞は、当時は色濃く、そして今も残り続ける女性差別の問題を孕んでいたように思います。
戦争に駆り出され、過去に検閲の対象となった己の脚本中の言葉をかけられることとなる菊谷。恐らく獄中で激しい拷問を受け、別人のように変わり果てた姿となってしまった工藤。
戦争や思想の弾圧といった当時の問題が人々にもたらした悲劇も、この舞台には描かれていました。  

そんな中でも、レビュー小屋の皆は常に笑顔で明るく振る舞いました。
恋人を失った上に恩人まで失いつつあり、失意の中にあるはずの奏は、眩い光を背負って舞台に立ちます。
白いシルクハットに燕尾服を着て、数多の蝶に彩られながら登場した彼の姿が、今も脳裏に焼き付いています。

「さあ、幕を開けるぞ」

夢子や菊谷らの思いを背負いながら、奏はこれからもレビューに立ち続けるのでしょう。
命をかけて、レビューで世界を変えるという信念を滾らせながら。
奇跡を起こす、と胸に刻みながら。



 





【おまけ】

偏差値2版の感想も書いておきます(というか、以前知り合いにこのブログについて「毎度内容が重い」「もっと脳直で書け」と言われたことを気にしている)。

実は「モダンボーイズ」、まさかの3列目で観劇することができ、加藤さんの美しいご尊顔がすぐ間近に……という状況でした。
目の前で繰り広げられるラブシーンに、気が付けば私の手は爪が食い込んだ跡だらけになっていました。


以下、馬鹿の書く感想



・学生服の奏くんかわいい
・初めてレビューに来た時に、そのへんの舞台用具触りまくって工藤さんに怒られてるの可愛い
・血だらけで弱ってる奏くん可愛かった。弱っている演技をする加藤さんは至高。
・奏くん、というか加藤さんの女装(?)……
・奏くん、というか加藤さんの生足…………
・加藤さんぶっ倒れる演技上手い
・女性陣に詰め寄られて困ってる奏くん可愛い
・奏くん着流し似合いすぎて死んだ
・元コーラス部っていう設定だし当時のレビューの歌い方だから、J-POPの時とちょっと加藤さんの歌い方が違って素敵
・加藤さんの津軽弁……
・ふとした瞬間の奏くんの憂いを帯びた表情が美人さん
・奏くん夢子さんに触れられる度にビクッとしてて可愛い
・皆踊ってるのに奏くんと夢子さんだけ二人ぼっちの世界入っちゃっててあんたら……ってなった。見つめ合ってんじゃねえ
・燕尾服の奏くん素敵。加藤さん和洋折衷どんな服も似合うな?
・き・ん・つ・ば、の奏くんセクシーすぎた
・女性を二人侍らせてる奏くん素敵……
・手袋を口で外す奏くん色気たっぷりすぎて声出そうになった
・二幕の奏くんがまさにモボすぎる
・膝をついて薔薇を差し出す仕草がこんなに似合う男いる?
・「俺も会いたい」え?可愛い
・顔が近すぎてキスするのかと思ったらした
・夢子さんと奏くんは並ぶと本当に様になるなあ……
・キスシーンは寸止めですか??????
・皆わちゃわちゃしてる時に一人フッ……って笑いがちな奏くん可愛い
・奏くんが夢子さんを抱き締める度に体格差を感じてリアコ魂を揺さぶられる
・夢子さんや菊谷さんがレビューに来てくれるお客さんの話をする時こっちを見てくれるから、なんだか自分たちと物語の中のお客さんが重なって感じた瞬間が何度もあった。何回か泣いた。
・奏くんが胸や肩をドンッ!ってどつかれる度に、加藤さんの存在をそこに感じた
・黒いスーツ着てたらより加藤さんの足の長さが分かる
・物語が進んでいくにつれてどんどん笑顔が増えていく奏くん可愛い
・途中でお互いの呼び方が変わっててキュン……
・布に包まって落ち込む奏くん……刺さる……
・夢子さんにもらった櫛で髪をかき上げる奏くん爆イケすぎて泣いた
・加藤さん彫り深っ。というか鼻高っ。目ぱっちり。
・加藤さんの眉毛の形 \ /←これ
・こんな近くで見ても顔が良いからすごい
・カテコで投げキッスする加藤さんが様になりすぎてて無事死亡

・「花の帝都に彗星の如く現はれ レビュウの空にひと際輝く 東洋一のモダンボーイ 浅草エフリィ」という謳い文句が似合いすぎる男 矢萩奏こと加藤シゲアキ




私も奏くんに「ビフテキ食べに行こう♡」って誘われたい人生でした。


閲覧ありがとうございました!